さあ、結末はいかに!
電車に乗って、本を開いても、憤懣やる方なく、頭に入らない。何度も先生の
言葉が頭の中をめぐる。“今日一日だけ、面倒をみなさい。今日一日だけ、今日一日だけ……”
突然、「ハッ!」と気が付いた。 「そうか! 親孝行は“今日一日”だけなんだ。」
私は無明の迷いから覚めた。 そして、先生のお宅の方を向いて合掌した。 夕食後のことである。
私は妻の両親を前にして、話を切り出した。「この家に来て、妻の手伝いをして下さるのは、
いつも、感謝しています。しかし、世間体というものがあります。義兄さん達の顔をつぶすことは
したくありませんので…申し訳ありませんが、明日帰ってください」といった。
妻の両親は言葉もなく、うつむいたままだった。妻はいたたまれず、涙を隠すようにして台所に走った。
翌日、両親は荷物をまとめ、帰り支度を始めた。私はわざと「どこへお出かけですか?」とたずねる。
「いや、昨夜、帰ってほしいと言われたから…」という。 「ですから、“明日”帰って下さい。
今日ではありませんよ」というと、しばらく、両親は私の言葉の意味が分からなかったようだった。
「“人生は今日一日”なのです。私は親孝行がいくら良いといっても、正直なところ、一生面倒みるのは嫌です。
しかし、今日一日だけは我慢できます。ですから、“今日一日”だけは気楽にして、明日になったら、帰って下さい」
両親と妻は、言葉もなく、涙を流した。 それから「今日一日」が二十年続いた。
この話を聞いたときは、涙が出ました。「過去も未来も無し、今しかないんだ!」このことが
腑に落ちる話だと思います。 有り難し、有り難し、有り難し
今日一日の親孝行2